研究課題/領域番号 |
14510186
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
社会学(含社会福祉関係)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
奥山 敏雄 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 助教授 (90201996)
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研究期間 (年度) |
2002 – 2004
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研究課題ステータス |
完了 (2004年度)
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配分額 *注記 |
2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
2004年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
2003年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2002年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 終末期医療 / 医療化 / 死にゆく過程 / 傾聴 / 良き死 / 自分らしい死 / 医療社会学 |
研究概要 |
ホスピスや緩和ケアの登場に典型的に現れているように、終末期医療が新たなタイプの医療として確立されてきた。本研究は、死にゆく過程が社会的、心理的過程としてどのような形で対象化されているのか、それに対してどのような医療的な管理が行われているのかを明らかにすることを目的とし、がんの終末期医療を具体的な素材として次の点を明らかにした。第一に、死にゆく患者が、医師、看護師、家族、その他の人々と形成する社会関係の性質、それら個々の社会関係において、死に直面することでむかえるアイデンティティの危機にどのように対処するのかについて、医療の場で死にゆく人が語る経験に焦点をあてることによって明らかにした。第二に、死にゆく人とのコミュニケーションにおいて、医師、看護師、家族などによる傾聴が、死にゆく人のアイデンティティの危機に対してどのような影響を与えるのか明らかにした。傾聴には「死の受容」を促すこと、「人生の意味の発見」を促すことという2成分があり両者は矛盾するが、それに無自覚なままに傾聴がなされることによって、死にゆく過程が「良き死」という医療内部で理想化されたパターンへと規範化されることになる。第三に、語りと傾聴というコミュニケーションの中で、死にゆく人の内面世界までもがある特定パターンへと整形され、主観的世界の医療的管理が浸透していくことを明らかにした。死にゆく人は、私的な経験を他者の前で語ることによってようやく自分らしい死に方を見出せるのだが、医療スタッフ、家族、他の人々など患者を取り囲む聴き手たちの側では、死にゆく人としての役割期待がキュブラー=ロスの5段階モデルに典型的な心理学的知識に影響されつつ形成される。こうした期待のもとで、傾聴を通して死にゆく人の内面へとセラピー的視線が幾重にも注がれることになり、死にゆく人の内面までもが医療的管理の対象とされていくことになる。
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