実施した質問紙調査について、計量的に変換されたデータにおける回答傾向と、子どものしつけやいじめに関する自由回答質問法の意見の考察を行った。その結果、なお探求の余地はあるものの、本研究において次のような知見と考察に至った。 設問のクロス集計により質問項目間の種々の相関が見いだせた。特に、年齢別いじめの経験において、年齢が若いほどいじめあるいはいじめられの経験が高くなる傾向が注目された。 本研究の主テーマに関するいじめの見方については、「いじめを絶対に許してはいけない」と答えると同時に「いじめられる側にも責任がある」と答えている人が、27.3パーセントである。これは、いじめ加害側が一方的に悪いとみなすのでなく、両者は対人関係の中でそれぞれ責任がある、あるいはそれぞれの状況に応じて責任が異なるととらえる相対的視点が働いているためであると考えられる。この思考は、日本人の生活価値観のひとつであり、浜口恵俊による「間人主義」と関連していると考えられる。 いじめとしつけに関する自由回答では、親が子どもを叱らないあるいは叱れないという意見があるとともに、他人が叱ると逆に親から文句を言われるという意見もあった。総合的に検討した結果、個人の権利意識や自己防衛意識だけでなく、相互によい面を育てることのできる人間関係を地域共同体レベルで形成することが重要であることを指摘した。
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