研究課題
基盤研究(C)
本研究は、介護保険制度を利用する要介護高齢者の自律性とその取り扱われ方について、居宅介護と施設介護のそれぞれのサービス提供の場面における、介護職員と要介護高齢者の相互作用のある状況を参与観察し、得られたデータの分析・考察を試みたものである。まず、措置費から介護報酬に転換されたことにより、施設における経営管理が重要性を増し、マネジメントが介護職員の労働や入居者との相互作用を統制し、変化させる。介護サービス利用における高齢者の自律性の取り扱いは、介護職員の個人的特性よりもむしろ、介護サービスを提供する施設の組織的特性が重要性を持つ。施設のマネジメントは、職員の介護労働を統制するメカニズムとして働き、施設の入居者へのかかわりを規定していく。統制された介護労働に組み込まれにくい、自律的な高齢者に対するケアは、組織の中では考慮されにくいものとなる。施設介護と居宅介護の利用者の自律性の扱われ方の違いは、介護サービスを提供する組織のビューロクラティックな体制の監視下に身を晒す状態が、施設入所から死に至る後まで「オンしっ放し」の状態に置かれる施設入居者と、「オンとオフの切り替え」が残されている居宅介護サービス利用者の違いといえる。後者は、施設の管理統制の及ばない家族による介護を意味する。施設入居者の選択の自由あるいは実行の自由は、組織の管理体制によって制約を受ける。とりわけ施設においては、あらゆる事故の防止策がとられている(転倒の防止、服薬の監視、施錠の管理等)。また、入居者の健康管理に対する保護・干渉主義の一方で、健康管理における入居者の意思決定は省かれていっている。
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社会福祉研究(愛知県立大学文学部社会福祉学科) 7
ページ: 27-33
Social Welfare Studies, Aichi Prefectural University, Faculty of Letters, Department of Socail Welfare Vol.7
愛知県立大学文学部社会福祉学科『社会福祉研究』 7
愛知県立大学文学部論集社会福祉学科編 第53号
ページ: 89-106
Bulletin of The Faculty of Letters Aichi Prefectural University No.53