研究概要 |
今年度は,昨年度に全国の大学の学生を対象に実施したアンケート調査の分析をおこなうことを中心にした。また,これに加えて,これまで継続的に調査研究を実施してきた高校から大学への進路形成の問題,そして多くの大学でのFDの取り組みに関する調査結果の検討も行なった。アンケート調査の結果については,「大学における教科指導と生徒指導」,「大学生の日常生活」,そして「学歴,そしてイメージとしての大学」というテーマで学会発表を行なった(日本教育社会学会第56会大会)。いまの大学生は,かなり熱心に勉強しているということや,大学の授業では「勉強の仕方」まで指導してほしいと考えていることなどが明らかになった。そして,ストレスを感じている大学生,自信のない大学生といった実態も明らかになった。しかし,そのいっぽうで学歴意識については一向に弱まる兆しをみせていない。むしろ,大学生の間には,かつて以上に強い学歴意識,学校歴意識のあることが認められた。 高校から大学への進路形成については,高校格差の影響が明らかに少なくなっており,「トラッキング・システム」の弱体化が明らかになってきている。これにかわって,高校教育のあり方や,高校生にとっては高校生活のあり方といったものが,大学への進路形成に大きな影響を及ぼしていることが認められた。さらに,FDについては,かつてとは比べものにならないほど積極的かつ頻繁に取り組みがなされている。しかし,そうした取り組みがどのぐらい学生のニーズに応えているかということになると,かなり曖昧である。あえていえば,FDのためのFDといった状況もないわけではない。こうした実態は,大学生を対象に実施した調査の結果からも明らかであり,FDの取り組みに関する今後の大きな課題と考えられる。
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