研究概要 |
本研究は,学校経営をめぐる環境変化の中で,学校経営の責任を担う学校管理職に求められる資質能力を保障しうる資格制度の在り方と養成プログラムの開発を目的に,その基礎となる分析を行ったものである。まず,戦後新たに校長免許状制度を導入した教育職員免許法の成立過程について分析し,その意味と意義について検討を行った。その結果,校長には教員としての力量に加え,学校経営,学校管理の側面での専門的な力が求められており,大学での特別な養成が予定されていた。しかし,この制度は1954年の免許法改正によって廃止され,その後は管理職研修という形で必要とされる力量の形成が図られることになった。当初,その内容は教育指導と学校管理に重きが置かれていたが,次第に学校の経営に関わる能力・指導力の育成に重点が移行していったことが明らかとなった。そして,今日では管理職固有の専門的能力である「マネジメント能力」を軸に管理職研修のプログラムが実施されている実態にあることも解明できた。ここには,それまでの優れた教育者が学校経営者になるというモデルから,学校の経営管理に関する専門的な能力を有した管理職への変化を読み取ることができる。しかし,当事者である管理職が必要とする力量については,具体的な職務遂行に関わるレベルでの力量であり,そうした行動を支える専門的な知識の獲得については必ずしも高い必要性認識を示していないという結果も本研究によって得られている。研修を提供する側と受講する側との間にある相違である。また,管理職の育成システムについては,管理職になるまでのキャリア形成という観点からのシステムづくりが課題であることも明らかとなった。今後は,本研究の成果をもとに現在検討が進められつつある専門職大学院構想での管理職養成問題の検討を行うことが課題である。
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