研究概要 |
本研究は,医療・保健・福祉領域に主眼が置かれている高齢障害者支援の現状に対して,高齢障害者の「学習」の必要性と可能性を示し,具体的な支援を検討していくための基礎的研究である.高齢障害者の活動の継続性と学習ニーズを説明するために,50名の高齢障害者に半構成的インタビューを行い,帰納的方法を用いて分析を行った.対象は,介護老人保健施設を利用し,研究協力への同意が得られ,インタビューが可能であった60歳以上の高齢障害者であり(男性15名,女性35名,60歳〜91歳,平均年齢77.8±8.5歳,介護度は要支援〜介護度4),活動歴ならびに学習歴と現在の生活状況,現在と近い将来の学習ニーズについて尋ねた.その結果,高齢障害者は,個々の障害と加齢による諸機能の変化,生活習慣の変化,自己効力感の低下,交通手段をはじめとする物理的環境要因などによって,多くの活動の継続性は絶たれていた.しかし,過去に経験があり「好き」だった活動,個人の「人生において意味づけられている」活動は,支援者によるその発見と遂行の手がかりによって開始・継続されていた.高齢障害者の学習ニーズは,「健康の回復・維持・増進」に関することが最もつよく,他者から介護を受けなければならない現実と折り合いをつけながらも,身近な人に「迷惑をかけない」生活を再建し、「自律」することが重要なテーマとなっていた.また,人との「交流」,身近な他者への「貢献」のニーズが強い一方で,障害による「否定的な側面の意識化」によって,とくべつの友人をのぞいて同世代の健康な人や集団との交流を「自らあきらめ,絶つ」者が多かった.本研究には,調査対象の一般性の問題を含むが,高齢障害者の個別の学習ニーズを検討する重要性とその支援のためのいくつかの提言が,最後にまとめられた.
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