研究課題/領域番号 |
14510331
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
文化人類学(含民族学・民俗学)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
関根 久雄 筑波大学, 社会科学系, 助教授 (60283462)
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研究期間 (年度) |
2002 – 2003
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研究課題ステータス |
完了 (2003年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
2003年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2002年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
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キーワード | 屋久島 / ソロモン諸島 / 世界遺産 / エコツーリズム / 共生 / 観光文化 / 白神山地 / グリーンツーリズム |
研究概要 |
本研究は、ユネスコの「世界自然遺産」に登録された地域に暮らす人びとと、その登録に伴い生じた観光開発の動きとの相互関係に関する文化人類学的調査研究を通じて、住民自身による「開発参加」のあり方や彼らの自然環境に対する見方を明らかにし、地域振興に関する実践的な提言を模索することを目的とするものである。具体的には、鹿児島県屋久島と、従来より研究対象としてきた南太平洋のソロモン諸島における世界自然遺産地域(ソロモン諸島の場合は、候補地域であったマロヴォラグーン地域)の生活誌、自然保護活動および世界遺産登録にいたる過程にかかわる文献や基礎的資料、エコツーリズムの振興に関する文献の収集、および数回にわたる現地調査を中心に研究を進めた。 本研究では、地元住民や「地元社会に定着するための文化的、社会的条件について明らかにするため、(1)屋久島民およびマロヴォラグーン地域住民と森林とのそれぞれの歴史的関わりを把握した上で、(2)両地域における経済開発全体に占める「観光」の位置や、(3)エコツーリズムの事例を、とくに関係する地域社会の社会的諸側面の変化に注目しながら現地調査をおこなった。そして、(4)両地域における調査から得られた個々のデータをもとに、周囲の自然環境と地元住民との社会的・経済的共生の姿を世界遺産観光の文脈において捉え、住民自身が直接開発事業の管理、運営に携わる「開発」が真に地元社会に定着するための文化的、社会的条件について考察した。その結果、世界遺産の自然そのものだけでなく、「世界遺産」のブランドやイメージをも利用しながら観光市場における当該地域のエコツーリズムを価値づけ、それと同時にその世界遺産から観光客の視線を観光文化へそらせるという一種アクロバティックな視線の操作(逸脱)が、世界遺産地区における「健全」な観光開発、地元住民の開発参加の実現と現代社会における「自信」の獲得、そして開発と環境との「共生」を持続させることに大きく関わることが明らかになった。 本研究では、当初の目的において、人類学的調査研究に基づく文化論的研究をふまえ、経済開発のための実践的提言をおこなうつもりであったが、今回は実践に踏み込む前の段階、すなわち世界自然遺産を抱える「辺境」の島社会とエコツーリズムとの相互関係のあり方に関する文化論的考察にとどまった。その実践に関わる民族誌的研究については、次の課題としたい。
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