研究概要 |
本研究は,中世におけるローマ帝国・ローマ皇帝権に関する歴史意識とその継続,神聖ローマ皇帝権(ドイツ皇帝権)の理念史とを,911年のドイツ王国成立以後,15世紀末の皇帝マクシミリアン1世登場の時代までを時代範囲として,総合的に究明することを目的とした。 具体的には,1.ローマ帝国・帝権史を,当該時代の公文書や年代記および歴史著作がどのように認識し,把握していたか。2.ローマにおける「神聖帝国」皇帝の戴冠と,アーヘンにおけるドイツ国王の戴冠との関係を,公式文書・年代記等がいかに理解していたか,について,帝権・帝国の理念と現実とが相克する中で,諸資料・書著作等の分析・解読・照合から,基礎的な検証・考察を行った。 研究課題である中世ドイツ帝国における歴史意識と帝権理念史の基礎的研究に関わる時代区分としては,ほぼ時代順に研究報告書各章に記したごとく,次の三つの時期に分けてアプローチをした。 (1)第一期においては,オットー朝,ザリエル朝時代の神聖ローマ帝権の理念成立史を究明した。 *特に中世帝権の盛期における様々な理念の併存と交錯を明らかにした。 (2)第二期においては,シュタウフェン朝および13世紀後半以降の,相次ぐ選挙王権時代の諸王における,ドイツ王権・帝権とローマ帝権の理念的整合化の過程を解明した *特にドイツ人の「選挙帝権」と古代ローマ帝権の関係及び教皇権の関与について明らかにした。 (3)第三期においては,14・15世紀における,ドイツ帝権とドイツ王権の理念と現実の相克を究明した。そして最終的には,中世ローマ帝権・ドイツ帝権とドイツ王権の理念と現実の相互的な展開史を検証した。 *中世末期のドイツ皇帝の教会支配権行使の実態や,「ドイツ国民」意識・概念の形成過程,更には隣接地域におけるドイツ人・ドイツ語・ドイツについての歴史叙述を考察した。
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