研究課題/領域番号 |
14510413
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
西洋史
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
前野 弘志 広島大学, 大学院文学研究科, 助手 (90253038)
|
研究期間 (年度) |
2002 – 2005
|
研究課題ステータス |
完了 (2005年度)
|
配分額 *注記 |
3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
2005年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
2004年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
2003年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2002年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
|
キーワード | 古代ギリシア史 / 碑文学 / リテラシー / 古代ギリシア / 碑文 / 文化 / ポリス / 統合 / ギリシア |
研究概要 |
本書の目的は、主に前6世紀から後3世紀までのアッティカにおいて行われた、「碑文文化」の諸相を明らかにすることにある。従来、碑文はテキストとして読まれてきた。碑文学者および歴史家は、古代において碑文はテキストとして読まれたと考え、また彼ら自身も碑文をそのようなものとして読んできた。つまり彼らにとっての最大の関心事は、碑文に書かれた内容であった。しかし本書は、碑文を単にテキストとしては捉えない。碑文を情報の乗り物の一つとして捉え、その乗り物の外観や存在の意味そしてそれが果たした社会的機能に関心を払う。かつては、碑文はテキストとして碑から剥ぎ取られて読まれてきたが、本書は剥ぎ取られたテキストを碑に貼り戻し、その碑を元の場所に立て直すことによって、本来、碑文に込められていたテキスト情報および非テキスト情報の総体を読み取ることに努めた。考察の結果、以下の点が指摘された。 (1)碑文を解剖すると、それはテキストのみならず、形、材質、場所、大きな文字、ΘEOI、レリーフ、製作費というパーツから構成されていることが判明した。 (2)これら非テキスト要素の一つ一つは、テキストと同じように文法を持ち、多くの情報を発信していた。但し、その情報は、必ずしもテキスト情報を補足するものではなく、むしろそれとは関係のないものであることが多かった。つまり碑文には、テキストによって書き留められた公的記録のみならず、非テキストによって表現された、個人的な思惑、野心、名誉心、願い、祈りなどが、綯い交ぜになって込められていたのである。 (3)碑文は二つの文脈において語られたたことが判明した。すなわち「第一文脈」(碑文を作った側の固定的な文脈)と「第二文脈」(碑文を読んだ/見た側の恣意的な文脈)である。そして「第一文脈」と「第二文脈」の間には、重複、ズレ、ネジレ、断絶、欠如が観察された。つまり碑文は、単に情報を記録・伝達するためだけに活用されたのではなく、人々を説得するための道具として、人々に縛りをかけるための道具として、人々をあるべき方向へと導いて行くため(国家統合)の道具として語られ、活用されたのである。
|