研究課題
基盤研究(C)
本研究は、中世北フランスの市場経済を保証した重要な制度の一つ、バポーム通過税について、その形成から変容までのプロセス一環(制度進化の過程)を、同時代人の苦情・訴訟、法規定等を素材として、市場流通をめぐる社会的合意の歴史的変容の一例として理解する試みである。具体的には、従来の刊本史料のみならず、北フランス各地の地方文書館に伝来するバポーム通過税訴訟関連の文書史料をその伝来形態も含めて検討し直した結果、下記のような歴史過程を再構築することが可能となった。1202年フランス王権は、北フランス一帯の諸都市の代表たちを交えて、バポーム通過税を成文におこす一大調査<inquisitio>を行い、史上初めて同地の通過税記録が作成された。その際に、バポーム通過が地理的に不要と思われる諸都市は一定の免除特権が認められもした。例えば、アミアン市はそれに含まれたが、サン・トメール市はそうではなかった。しかし、1276年にサン・トメール市が、部分的なバポーム通過税免除特権を新規に獲得したことを機に、従来の地域的合意事項が動揺し始める。まずは、バポーム通過税徴収側は、1202年規定をより厳しく運用して、通関体制を強固なものへと整備し始めた。このため、1202年規定では免除されていた都市が今度はその特権を失いかねない事態が生まれてきた。関係諸都市は、この件をパリ高等法院に提訴するが、徴収人側の1202年規定解釈が優先されて、都市の既得特権は次第に無効になっていく。この過程で、唯一過去の文書や判例を有効に活用し、争点を明らかにしながら自己の主張を押し通したのがアミアン市だった。アミアンはパリ高等法院の判例主義とその中立的性格を引き出しながら、自己に有利な判例を1340年代には獲得する。むろんそれは多様な判例群の一部でしかなかったが、アミアンはそれを梃子に、自己の権益を守る独自の都市文書集さえ編纂した。以上のごとく、13世紀後半におけるバポーム通過税慣行の部分的変更は北仏内部に大きな歪みを引き起こし、多くの既得権所持都市を混乱に陥れた。が、彼らは13世紀以降機能し始めていたパリ高等法院の法判断を常に重視して動くようになる。また、完全に地域合意の形成はもはやあり得なかったが、訴訟の繰り返しと争点の明確化が、次第に一定の妥協点に至ったと見ることが出来る。
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