研究課題
基盤研究(C)
本研究は、石器石材として利用される岩石の性質が石器の製作にどのような影響を与えるのかという問題について、製作実験を踏まえて実資料との比較検討を行ったものである。その中でも、後期旧石器時代から弥生時代にかけて西日本で広く流通した石器石材であるサヌカイトを研究の主材料とした。サヌカイトの岩石的特徴が横長剥片剥離技術の発達を促したとする通説があり、その検証を行う必要があったからである。今回の実験では、サヌカイト・黒曜石・珪岩等の大形原石を打ち割りその違いを検討した。原石の場合、打撃方法はその形状に一定の影響を受けるものの、剥離された大形剥片の形態に大きな違いは生じなかった。ただし、サヌカイトは流理構造に対して剥離方向が大きく規制されることを確認した。また、分割した原石を用いた実験では、同一打面の連続剥離において、黒曜石の縦長指向が強まることを確認した。サヌカイトは逆にこの段階で横長指向となる。特に打撃力(ソフトハンマーによる)がコントロールしやすい段階においては、サヌカイトの流理構造が大きく影響する。一方、尖頭器のように板状のブランクから剥片剥離を行う場合は、黒曜石・サヌカイト・チャートにおいて、製作物と調整剥片等に大きな違いが生じなかった。打撃角度が薄く、打面が線状となる場合においては、岩石種の違いはあまり影響しないのかもしれない。こうした特徴が、サヌカイトが細石刃石器群には利用率が低下したが、尖頭器製作で再び流通した要因の1つとみられる。
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旧石器人たちの活動をさぐる-日本と韓国の旧石器研究から-
ページ: 65-90
Palaeolithic Peoples-The View from Japanese and Korean Research, Research Project of the Korea Peninsula, Osaka City
科学 72・6
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KAGAKU(Iwanami Shoten) vol.72 No.6