研究概要 |
「沖縄県宮古・八重山方言の調査研究」というテーマで,2002年度から2003年度にかけて科学研究費補助金の交付を受けた。研究実施計画に従って,2002年度には八重山竹富町黒島方言の音韻・活用・助詞の用法などの体系調査を実施した。同様に,2003年度には宮古下地町来間方言の体系調査を行なった。二つの方言とも70代以上の話者を中心に調査を実施している。それゆえ比較的もとの方言を記録することが出来た。音声面・文法面でも貴重な資料を得ることが出来た。黒島方言では顕著な母音交替現象を観察することができた。来間方言でも[i]と[e]の交替が顕著であるが、これは共通語の影響によるものと解される。また、宮古・八重山方言では共通語の[w]が[b]になる。これについては従来もよく報告されてきた。しかし、なぜ[w]が[b]になるのかについての研究はほとんどなされてこなかった。過去4年間の宮古・八重山方言の調査研究を通して、この問題についてもある程度わかってきた。この問題については、別に論文としてまとめて学会誌に掲載する予定である。宮古・八重山でも、元の方言が失われて、次第に共通語化しつつあることは言うまでもない。琉球方言の記述研究はこれからも続けて行かなければならない。今回の調査結果については研究成果報告書として2004年3月に公刊する予定で,現在作成を進めているところである。
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