研究概要 |
『雅俗幼学新書』は,1827(文政10)年成稿,1855(安政2)年に刊行された辞書で,著者は森楓斎(源愿)である。2巻2冊(1冊もあり),計240丁,イロハ順で,14門からなり,38,105語を収録している。以後,慶応元年,明治三年,明治九年と版を重ねる。 『雅俗幼学新書』自体がいかなるものであり,その著者である森楓齋がどのような人物であるのかについて,数種の資料からその内容や活動実績の一部を明らかにすることができた。具体的には,筆耕などとして,『舎密開宗』,『分間江戸大絵図』,『江戸大節用海内蔵』との関わりがあったことを見出した。 収録語については,序に「爾後補其(筆者注:節用集を指す)闕略。拾其遺漏者。日月以出焉。可謂盡矣。」とあるように,見出し語は江戸後期の節用集に類似している部分がある。ただし,江戸後期の節用集の比較照合だけでは解決が図れない面がある。そこで,先行資料(唐話辞書)と後続資料(対訳辞書)との関係について,漢字表記の面から比較・対照を行った。その一つの成果として,『雅俗幼学新書』が『和英語林集成』に漢字表記をはじめ影響を与えたことが判明している。今後,近世中国語との接触,さらには受容の過程など,幅広く収録された漢字表記をはじめ検討していく必要があると考える。 本研究では,全見出し語をはじめとした全内容の入力を行った。『雅俗幼学新書』は,イロハ順の後,門別に分類されている。そこで,本データベースを出力するにあたり,第一字目の「漢字」で検索することを目的とした。その際に収録語の第一字目を『大漢和辞典』の「文字番号」順に並べた。同一字目内の順は『雅俗幼学新書』の出現順によったことで,多面的な検索が可能となった。今後,江戸後期の漢字表記をはじめとした研究・考察の際の基本資料・データベースとして活用することができると考える。
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