研究概要 |
本研究の研究成果は、研究資料の作成と、論文の二種類に分けられる。 研究資料に関しては、移動などの言語表現を複数の言語で比較する際に重要な資料となるFrog storyの日本語データを、23人の日本語話者から採集し、データベース化した。また、移動表現に関する膨大な文献リストを2002年度に最初に出版の形で公開し、その後も順次追加改訂してウェブ上で公開した(http://www.lit.kobe-u.ac.jp/~yomatsum/motionbiblio.html)。現在文献数は990に達し、言語グループ別、研究テーマ別の構成にしたため、利便性が高くなっている。この二つには引き続いて取り組んでいく予定である。 研究成果の公開に関しては、(先の文献目録のほか)4つのの論文を学会誌などに発した。これらは、使役移動構文の意味的制約に関するもの(2002a)、Talmy,の移動表現の類型の改訂に関するもの(2003a, b)、及び日本語の視覚的移動に関もの(2004)である。これらは、理論的な考察とともに、コウビルド・コーパス、毎日新聞データ集などのコーパスデータの検証に基づくものである。2003a, bでは、Talmyの類型論が異なる解釈を与えられてきたことを指摘し、さらに、経路が表されるのが動詞句の主要部であるのかそうでないのかという観点からその類型を再定式化するという主張を行った。2004においては、日本語の視覚表現に移動がどのように関与していることを議論した。この視覚的移動に関しては、2004年度の英語学会シンポジウムにおける発表論文で、どのように移動表現の類型論と関わるかについて論じた。その中で、移動、使役移動、視覚移動の順で、動詞句非主要部で経路が表される可能性が高くなる、という普遍的仮説を提示した。
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