研究概要 |
1.近代の権威的法典籍の一つであるブラックストン著『イングランド法釈義』は,その第9版(1783年)を底本とすべきことを確定し,頁付にまつわる混乱要因を指摘したうえで、近年広く用いられる初版ならびにstar pagination版と比較する、(第一巻および第四巻の)全頁にわたる「頁対照表」を作成して、『釈義』研究に対する便益を提供した。『釈義』頁付混乱要因に関する実証的知見および「頁対照表」がまとめて提示されるのは、恐らく世界でも初めてのことであると思料される。 2.『釈義』が掲げる索引項目を,網羅的に表計算ソフトに取り込んだ。この作業により貴重な研究基礎資料を獲得したと言いうる。 3.上記の底本索引項目が,その後の代表的なlaw dictionaryの記述に与えている影響を実証的に分析するために,わが国でも著名でかつ多く用いられてきた,Ballentine's Law DictionaryおよびBlack's Law Dictionaryのそれぞれ,1250頁,1400頁に及ぶ項目のすべてに対し,全項目をチェックした。これにより「ブラックストン釈義・Law Dictionary項目対照表」とでも言いうるものを獲得した。この種の資料も,管見の限り世界的にも例がないものと思われる。 4.上の対照表を分析すると,Law Dictionaryに対する釈義の影響力は,英米法の基本中の基本である,中世以来続く歴史的法概念の中に,極めて夥しく,しかも多くは釈義の説明がほぼそのまま辞書の説明となっている形で現れていることが明白に看取できる。さらに,わが国の代表的な英米法辞典が,かつて上記2 Law Dictionaryに大幅に依拠していた事実があり,これらを一覧できる形で「研究成果報告書」にまとめ,提示した。
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