研究課題
基盤研究(C)
(1)2003年3月には、カナダにおける有罪答弁の受理手続を傍聴するとともに、担当判事との意見交換を行った。カナダ刑法は2002年9月に改正されており、有罪答弁の受理手続がより厳密となっていた(特に任意性の調査)のみならず、実務においては、アメリカ連邦刑事訴訟規則と類似して、「実体的正当性に関する事実的裏付け(response to the facts of substantially correct)」の吟味がなされていることを確認できたのは大きな成果であった。(2)アメリカとカナダにおける有罪答弁制度を調査したのち、2003年9月には、イギリスの有罪答弁制度の調査を行った。ロンドンの郊外にあるスナレスブロック刑事裁判所(Snares brook Crown Court)におけるとくにケネディ裁判官(H. H. J. William Kennedy)の有罪答弁受理手続を傍聴した。裁判官の強い訴訟指揮が際だった手続であることに強い印象を受けた。また、事前に質問表を提出しておいたので、傍聴の前後にケネディ裁判官から、質問表に対する解答を頂いた。そこでは、とくにアメリカ法におけるような死刑を逃れるための有罪答弁(いわゆるAlford Plea)に相当する事例あるいは議論がイギリスにあるかとの質問に対して、そのような答弁はありえないし、経験したこともないし、理解もできないとの解答があったことが参考になった。アメリカ法におけるような「取引」形態はイギリス法にはありえないことが確認できた。(3)論文として、「有罪答弁の事実的基礎-いわゆるアルフォード・プリーをめぐって-」において、被告人が有罪答弁を行いつつ、「自分は無実である」と主張する事例について、その答弁を有効と認めた1970年のNorth Carolina v. Alford事件を検討し、そこでの「「事実的基礎(factual basis)」の意義について考察した。
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早稲田法学 78-3
ページ: 179-207
waseda Law Revies vol.78, no.3
ページ: 199-207