研究課題/領域番号 |
14520095
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
政治学
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
横山 俊夫 京都大学, 地球環境学堂, 教授 (40027553)
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研究期間 (年度) |
2002 – 2003
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研究課題ステータス |
完了 (2003年度)
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配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2003年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2002年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
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キーワード | 19世紀日本 / 文明化 / 礼法 / 日用百科書 / 節用集 / 大雑書 / 書物利用 / 御所風 / 節用集(せつようしゅう) / 大雑書(おおざっしょ) / 安定化 / 文明史 / 風雅 / 自足 / 諧謔 / 異端 / 文明 / 五行説 / 家文書 / 小笠原流 / 日用百科書手沢相 |
研究概要 |
19世紀日本の日用百科書である大冊の節用集、大雑書に注目、(1)それらが載せた多様な生活知識を、文明史的意義をもつ「礼法」として評価して伝存諸本を精査、(2)書物の入手、保持の諸相を明らかにし、(3)使い方の多様性と類似性を考察、(4)礼法伝播の階層的、地理的な広がりと、伝播には推進力と抑制力が均衡することを明らかにした。 上記(1)については、両書が載せた礼法知識が、総体として、宇宙的全体感覚、その中での自己の位置感覚、行為対象との相性感覚、心構えと身体動作にわたる秩序参同感覚を提供しうることを確認、(2)については、家蔵本は主人独占とされがちで、他書よりも移動しにくいものの、その所在は町村の共同体によく知られ、所有者は非所有者へも記載知識を分かつ習いがあったこと、つまり共同利用性の高さを明らかにした。 また(3)使い方については、かつて研究代表者が開発した下小口手沢相の電算画像処理による使用類型析出の意義と限界につき、国内残存諸本の肉眼による手沢精査、および大英図書館蔵の幕末期外国人購入本調査をふまえて省察、当時の日本人がこれらの書物からの礼法知識、とくに「御所風」のそれに執心であったことの重要性を確認した。 結論として、(4)これらの書物群は、記載知識を必要に応じて、上下層の隔てなく土地の遠近も問わず、あたかも人体中の神経網のように高い浸透性で伝達しうる媒介として機能したことを明らかにした。その伝達力を支えたのは「御所風」への憧れであったが、その傾向が、最上級を競う上昇志向一辺倒にならなかった理由として、外在的には、各地で風教令や倹約令が頻発されたことを、内在的には、掲載知識の随所に、全体の和を図る相性重視の思想がこめられていたことを見出すとともに、とくに「御所風」の核であった当時の陰陽道自体が、重層性、柔軟性に富み、異端を生まず、戯作の題材ともなりえたことの文明史的意義を考察した。
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