研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は、民主制定着期の「参加」の問題を、韓国を事例として考察することである。民主化後の韓国においては、既存の政党システムの下で「市民社会からの要求を反映しがたいこと」が問題とされてきた。しかし、2002年の大統領選挙において「新たな形式の参加」が出現し、2004年の総選挙を経て既存の政党システムに変化がもたらされた。よって、本研究では、2002年度の大統領選挙契機とした新しい政治参加と政党システム変化の問題を中心に扱い、さらに、「地方における参加」の問題を中央政治との関係で考察した。研究の結果、次の点が明らかになった。第一に、2002年の大統領選挙を契機にして、新たに「保守か進歩かというイデオロギー」が投票行動に重要な影響を与えるようになった。なかでも、「対米・対北朝鮮」関係など外交安保をめぐる問題が、イデオロギー対立の中心として認識されている。第二に、こうした新たな政治争点が顕在化した背景には、新しい形式の「参加」を通じた問題の争点化があった。彼らが、「冷戦構造のもとで維持された旧体制」から続く問題解決を提起したことが、選挙における対立構図の変化、および政党システムの再編の重要な契機として作用した。第三に、こうした参加の出現の背景には、「政治的機会構造」の変化があった。大統領選挙に際して行われた政党改革が、当初の意図を超えたダイナミズムをよんだ。第四に、「世代」変数が政治に意味を持つものとして現れた。これは新たな参加がインターネットを通じて行われることにも関連している。第五に、地方-中央関係においては、地方政治に対する中央政治の影響力が強く、地方選挙における参加の問題も中央レベルの政治に左右されている面が強い。以上のように、民主制定着期における制度化は、市民社会からの参加によってその方向が大きく影響され、かつ新たな制度の導入が参加を促進するダイナミズムを示している。
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東洋文化研究 7
ページ: 177-212
Journal of Asian Cultures Vol.7
東洋文化研究 7号(発表予定)
現代韓国の市民社会・利益団体(辻中豊, 廉載鎬編著)(木鐸社、に) (所収)
ページ: 51-83
Civil Society and Interest Group in Contemporary South Korea. (Tsujinaka, Yutaka, Yoem, Jaeho eds.)(Bokutakusha)
現代韓国の市民社会・利益団体(辻中豊他編著)(木鐸社) (所収)
現代韓国朝鮮研究 3
ページ: 19-29
The Journal of Contemporary Korean Studies No.3