研究課題
基盤研究(C)
日本型利益誘導政治と英国の政治との比較であったが、本研究に取り組む中で、なぜ、英国が1970年代の財政危機から立ち上がることができたかについて、焦点が絞られるようになった。英国では、1980年代のサッチャー政権を通じて、「小さな政府」路線が試みられたが、政府の規模は失業対策費の増加などもあって、必ずしも当初はうまくいかなかった。サッチャー政権は「小さな政府」を実現することには失敗したが、一方で、医療・教育・住宅・社会保障などの分野に市場原理を取り入れることには成功した。その研究の一つのまとめとして論文を執筆した。その論文の中では、まずサッチャー政権の医療政策を検討し、サッチャーがGP基金と言う形で、診療所のなかで患者を多く集める診療所に助成金を与える政策を導入し、また、それまで国営病院であったものを特殊法人化し、自由度を与える改革を行った経緯を見た。しかしながら、結果的には、それによって、英国の医療は改善することはなく、英国の病院における順番待ちは一層増加することとなった。保守党政権からブレア政権に変わってからも、ブレア労働党政権は、サッチャー政権と同様に、市場原理を医療や教育の分野に導入した。その具体的な取り組みは、ブレア政権下の財団病院や診察処置センターの取り組みなどに見られる。しかし、こうした民営化・市場化の取り組みによっても、医療改革は成功したとは必ずしもいえない。ただし、財政の状態は、ブレア政権においては以前と比べると格段に良くなっており、サービスの改善にはなっていないが、財政改革はかなり成功していると言える。そういう意味では、日本型利益誘導政治が存在していない一方、サービスの改革には必ずしも成功していないと言えるだろう。
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Koyoshobou
ページ: 1-258
現代政治のパースペクティブ(畑山利夫・丸山仁)(法律文化社)
The Pespcective of Contemporary Politics, (T.Hatayama, H.Maruyama, (eds)). (Houritsubunkasha)
ページ: 23-43