研究課題
基盤研究(C)
申請者は、平成14年度から平成17年度にかけて、大英図書館とケンブリッジ大学図書館で資料収集を行い、およそ100点をこえる一次資料を収集した。そして、この調査にもとついて平成17年度に「投機と信用-1825年恐慌とフリーバンキング学派-」を執筆し、これを『山梨大学教育人間科学部紀要』第7巻第2号、2006年3月に発表した。この論文は、セントラルバンキングとフリーバンキング論争を3つの段階に分けて論じたものである。論争は、第1期がマカロックとパーネル論争、第2期がトゥックとギルバート論争、第3期はハッバードのギルバートの批判の段階である。フリーバンキング学派はパーネルが基礎を築き、ギルバートが発展させた。第1期の論争の焦点は、通貨の過剰と信用の膨張の区別であった。パーネルは銀行券交換機構を主張し、通貨の過剰を否定した。第2期のそれは、銀行の前貸しするものは何かである。銀行の貸付を貨幣資本の貸付や資本の前貸しに見る論者に対して、ギルバートは銀行の貸付を通貨の供給と資本の前貸しの2つに区別して論じることを強調した。さらに第3期のそれは、銀行信用の受動性と能動性の関連である。銀行信用の受動的性格を強調するギルバートの中立的信用観に対して、ハッバードは銀行信用の受動性のなかに能動性をみる視点を指摘した。フリーバンキング学派はこのように通貨の過剰発行はありえないという点では銀行学派と接点を持つが、他面では銀行信用の能動性と信用の膨張とを結び付けられなかった点や、イングランド銀行の通貨の過剰発行を認めている点など銀行学派とも通貨学派とも異なる「第3の学派」としての性格を明らかにした。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (2件)
山梨大学教育人間科学部紀要 第7巻第2号
ページ: 38-60
110006569424
Bulletin of the Faculty of Education & Human Sciences University of Yamanashi Vol.7, No.2