研究概要 |
1.輸出企業を有する政府が貿易政策として輸出補助金を用いるかどうかは,R&DスピルオーバーとR&D投資の相対的費用の両水準に依存する.その相対的費用が高いか,それともそれがそれほど高くなく,しかもスピルオーバー水準が相対的に大きいときには,最適貿易政策は輸出補助金となる.しかし2つの水準によってはそれがレッセ・フェールまたは輸出税である可能性を排除できない.輸出補助金は輸出のみならず,R&D投資を促進する効果を有する. 2.クールノー数量競争下とベルトラン価格競争下のマーケット・パフォーマンスの比較では,たとえR&D投資とそのスピルオーバーが存在する戦略的モデルにおいても,非戦略的モデルと同じ結果が成り立つ.さらに,クールノー数量競争下において企業がR&D投資を戦略的により多く用いるかどうかはスピルオーバーの水準に依存するが,ベルトラン価格競争下ではR&D投資を戦略的に用いる誘因は小さい. 3.R&D投資の成果をライバルに公開するかどうかは,企業が市場で数量競争を展開しているか,それとも価格競争を展開しているかに関係なく,需要関数における交叉価格効果の符号に依存する.さらに,寡占企業によるR&D投資に関するカルテルの形成は企業にその支出を増加させ,より多くの利潤を獲得させることにつながる.また数量競争企業は,生産物が代替財であるとき、R&D協力がないときよりもそれが存在するときにより多くの利潤を獲得できる.
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