研究概要 |
第1に,古典に関する研究整理・評価,新しい制度理論を評価・分析により築いた分析用具を,東アジア資本主義の特殊性解明の中で試行し,検証した。成果としては「グローバル資本主義と経済の多様な「型」」前半部の組織と当事者仮説とその検証である。 第2に,当事者は合理性<主体>ではなく制度的環境の従属変数であるとするのが当初の研究テーマの中心的仮説だったが,当事者行動がどのように具体的に制度的環境に結びつけられているの解明が必要になった。これは,グローバリゼーション下での当事者行動の変容(近代化)を素材として,これを説明できる理論的ツールの確立を目指した試行を行った。成果は「グローバリゼーション・ヘゲモニー・<文化>」に取りまとめられ,その骨格は「アメリカ--<帝国>の行方」(『アソシエ』13号,御茶の水書房、2004年4月25日)に提示した。 第3に,こうした実証・検証作業を通じて得た,制度的当事者理論を一つは組織とその中の個人,あるいは組織の動態に関わる個人の知識という形で組織内当事者論を完成し,「企業の組織構造と多様性」にまとめた。 最後に,一般的な当事者理論として,組織内外を通じ,しかも組織環境に依存しながら,経済活動の動因となっている当事者の姿を「当事者理論の制度論的基礎」に取りまとめたが,実際の当事者行動は,合理的主体像が想定するように,熟慮や計算・推論といった理知的な能力基づくものではなく,ハビトゥスという緩い適応戦略の中で,無意識的・自動的ながらも,かなり明確な選択行動を採っていると考えられることが分かった。
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