研究概要 |
世界の人々の間に極めて大きな経済格差が存在することは今日の世界における深刻な問題のひとつである。本研究は(1)世界各国から得られる国民所得・人口・国内所得分布表の3種類のデータを全て用いて世界全体を対象としたひとつの大きな所得分布表を独自に作成し,世界的観点から所得不平等を評価すること,並びに(2)不平等計測のための計測理論に関する基礎研究を深めること,を目的として行われた。より具体的には,世界168国を対象とした世界的所得分布表を作成し,特に中国の所得分布が世界的所得分布にどのような影響を与えているかの分析を行った。所得不平等計測の基礎研究としては,筆者が$eta$-inequality equivalenceと名付けた新しい中間主義的不平等概念と同概念に対応する新しいローレンツ曲線基準($eta$-Lorenz dominance)を提唱し,この新ローレンツ曲線基準と社会的厚生基準の同値性定理を証明した。その上で,新しい中間主義的不平等概念の更なる展開を行った。とりわけ,不平等観が社会の所得水準に応じて変化し得る形に同概念を一般化する方向での展開を試みている。
|