研究概要 |
関連文献の研究と内外の関係研究者との意見交換を通じ、近年の先進資本主義諸国における経済状況の変化、とくに経済のグローバル化が各国,特に日本の社会、経済状況に与える影響についての考察を行った結果、以下の知見を得ることができた。 この間の研究は、1999-2000年の英国を中心とする欧米諸国滞在時の研究の到達点(経済学分野、社会学分野、社会政策分野、心理学分野に関連するもの。その成果は2002年にHiroto Tsukada, Economic Globalization and the Citizen's Welfare State, Ashgateとして刊行した)で得た,先進諸国における福祉国家の今後の展開動向についての見通し(戦後四半世紀間の福祉国家の発展を支えてきた政労使の三者間の力の均衡は、経済のグローバル化のもとで崩れつつあること、それは企業のグローバル化が限界に達したとき再び世界大で再興されるであろうこと、それまでの時間は従来の水準の安心を得るための福祉制度を維持しようとするならば、国民一般による負担増が不可避であろうこと)に対して、新たな道の可能性を示すものとなった。 その可能性とは、上のような世界的コーポラティズムの再興までの時間は、政治と労働のそれぞれの分野におけるグローバルな協力関係の発展があれば、短縮される可能性がある、という点である。このような新たな道の可能性は、具体的にはEUにおける政治・経済の統合のもとでのヨーロッパ的な福祉国家を維持しようとする力が強くなりつつあることに、また中南米でアメリカ型経済運営に対抗する政権が成立、展開しつつあることにも表れている。このようないわば非アメリカ型のグローバル化の道とアメリカ型のそれの間に立って、日本はいまだ政治も労働も世界的な協力関係の形成への努力は行っていない。しかし今後はこの二つの道のいずれを重点とするかが大きな問題としてますます問われることになるであろう。
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