研究課題
基盤研究(C)
1980年以降の製造業雇用におけるもっとも大きな変化は生産労働者比率の低下である。雇用構造の変化は、企業内と企業間のそれに分けてみることができる。企業内においては、比較的若年時からの技能の上下分解と賃金格差の拡大が進みつつある。これは比較的緩やかな技能形成と若年時には処遇に差を付けない管理を基本としてきた日本企業の雇用慣行を揺るがす恐れがあるもので注目される。他方で、そうした技能序列の下位にある労働者の仕事は外注化が進んでいる。製造業全般では仕事の外注化は他産業ほどには進んでいないといえるが、部門によって差が見られる。それらが企業間の雇用構造の変化につながっている。すなわち、外注化といっても自動車産業では比較的明瞭な歯止めがみとめられる一方で、鉄鋼産業ではとくに製鋼工程ではこれまでにない程度の外注化が進んでいる。外注化といっても自動車産業は構内での期間労働者の多用、下請への製造外注であり、鉄鋼業は構内下請の利用が主たる形態である。両産業の大企業が立地する本調査の対象地域では以上のような変化の下で雇用面でいくつかの変化が生じていた。とくに大きな変化は自動車産業部門でみられた。同産業では情報技術の利用により発注方法が変化し、これまでよりも大きな単位での部品発注に切りかわった。それによってこれまでは2社に発注されていたものが、そのどちらか一方に他社分をもまとめて納入させる方式に変わった。それによって下請システムの一次下請に位置していた企業のうちの一定部分が二次下請に降下した。さらに二次下請のうち三次下請に降下する企業も出ている。当産業では雇用総量には目立った減少は見られないが、下請システムの上位企業では技術員への労働需要が拡大し、生産労働者への需要が縮小する傾向がある。他方で、下位企業になるほどそうした傾向は薄らぐ。これらの産業内部の雇用構造の変化が地域レベルの雇用構造の変化を引き起こしている。
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