研究概要 |
本研究では、企業の技術標準形成戦略がどのような要因によって規定されるかを考察するために、特にIT産業において重要な役割を演じているインターフェース標準を取り上げ、そうした標準形成に対る企業戦略の規定因を探ってきた。IT産業では、実際の標準が多数の技術的構成要素を持っているから、標準策定戦略は技術知識をめぐる企業間の(事前的な)コーディネーションという色彩を持つことになる。標準策定戦略を技術知識の事前的なコーディネーションとして整理した上で、近年IT系産業ではとりわけハードメーカーとソフトメーカーのM&Aが活発化していることを実証的に明らかにし、これらのM&Aが標準策定行動に無視し得ない影響を及ぼしていることを示した。さらに、1980〜1990代にかけて標準策定をめぐる企業間の合従連衡が生じたDVDの事例を取り上げ、そうした合従連衡が関連する企業が有する特許ポートフォリオに大きく依存することを示した。より具体的には、Hall, Jaffe & Trajtenbergが作成した1964〜1999年のアメリカ特許データベースによる特許データを用いて、現行DVD規格の策定に関しては、既存のCD規格に対する企業の技術開発に対するコミットメントの態様がその戦略を規定していることを指摘した。さらに、こうしたコミットメントの有効性は関連企業の技術資産や研究開発戦略に大きく影響され、これがDVDをめぐる企業間の標準形成戦略の違いと帰結をもたらしたことを明らかにした。
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