経営破綻した金融機関の営業停止および整理の合理的な決定について、理論的計量的に分析することが、本研究の目的であった。信用金庫・信用組合を分析対象として研究を行ったが、相対的な規模の大きさおよびデータの継続性の観点から、最終的には信用金庫だけを分析対象とした。分析期間は、1999年から2002年までである。1999年から2002年の期間に破綻した信用金庫25金庫と、同時期に事実上、救済合併された34金庫、および比較対象として、存続している信用金庫からランダムに選んだ25庫とを計量的に比較するという方法を採用した。 主要な分析結果は、以下の通りである。 (1)破綻処理、救済合併、継続という3つのグループについて、どのような要因で処理が決まったかを、多項ロジットモデルで分析した。自己資本比率が、説明変数として有意であった。予想された結果ではあったが、したがって、破綻信用金庫の破綻原因は、規模の面での劣位ではなく、不良債権を生み出した経営判断の誤りにある可能性が高いことが推測できた。 (2)破綻金融機関の破綻処理コストとして、預金保険機構から(救済)合併信用金庫に対する金銭贈与額および破綻信用金庫からの資産買取額の合計値を用いた。破綻信用金庫と救済合併信用金庫のデータとを対象として、破綻処理コストを被説明変数とするトービットモデルを推定した。説明変数として、自己資本比率、業務純益が説明変数として有意であったが、資産規模は有意ではなかった。 (3)分析期間中の最初の破綻処理を起点とする経過月数が自己資本比率の説明変数として正値で有意であることを回帰分析によって検出した。破綻が深刻なものから処理されたことが確認された。
|