研究課題
基盤研究(C)
1.日・米・独の職能給の比較から、以下の諸点が明らかになった。(1)賃金総額に占める職能給のウェイト:日本では、職能給が基本給の一部分にとどまる事例が多く、米・独ではその全てが職能給になっている。(2)職能給の基礎となる能力区分:3カ国ともに比較的一般的・抽象的な規定に基づく点で共通している。ただ、米国では、習得職務数を基準にする事例もあり、能力区分の仕方は多様である。(3)従業員の格付け・昇格:ドイツでは、経営協議会との共同決定に委ねられる点に特徴がある。米国では、労使代表からなる委員会が昇格認定を行う事例、直属上司やチームの同僚に委ねる事例もあり、昇格認定の方法は多様である。日本の場合、昇格認定に大きな役割を果たすのは上司による人事考課である。(4)人事考課:米国でも、職能給採用事業所では、技能認定の際に組合員に対しても人事考課を用いている。日・独では、昇給の際に組合員にも人事考課を活用している点で共通している。ただ、人事考課表は、日本では使用者がこれを自由に決定しうるのに対し、ドイツでは、労使間の協約に依っている。評価結果に対する異議申し立て制度は、3カ国ともにこれを採用している点で共通しているが、その制度化・普及度に関しては3カ国の間に差異がある。(5)職能給制度の設計・運用プロセスへの従業員の関与:従業員が関与している点で3カ国は共通しているが、その仕方や程度に関しては3カ国間に差異がある。米国では、労働組合の有無や従業員参加型管理方式を採用するか否かによって従業員の関与の仕方は異なる。ドイツのフェーゲレ社の場合、制度の枠組みは団体交渉で規定され、その運用に関しては経営協議会が共同決定するという仕方で大幅に関与している。2.職能給採用企業の組織的特性に関しては、アメリカについてその一部を明らかにするにとどまった。3.職能給の新動向に関しては、賃金の成果主義化と関連した日本の職能給制度の展開の考察にとどまった。米・独の動向に関しては、今後の課題としたい。
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Working paper series (Faculty of Economics Wakayama University) 04-08
ページ: 1-22
40006335221
成果と公平の報酬制度(奥林康司編著)(中央経済社)
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Compensation System based on Performance and Equity, (Okubayashi, Koji (ed.)) (Chuou Keizaisha)