研究概要 |
本年度は,9月に中国・北京郊外の中関村における調査を行った。中関村は,"中国のシリコンバレー"と呼ばれている面積360万平方キロのエリアで,北京市人民政府の「中関村科技園区管理委員会」が管轄する中国最大のサイエンスパーク(科技園区)である。北京大学や清華大学,人民大学など約70の大学と,1万社を超えるIT企業が集まっている。1988年に国務院の許可を得て,北京新科学技術産業開発試験区が設立されて以来,発展してきたが,この地区の起源は中国初のIT民営企業の四通が万潤南によって創業されたことに始まるとされている。四通は中国語ワープロの開発で有名な中国の代表的なIT企業である。管理委員会によると,中関村地区の総売上高は1991年の14億元から2001年に1700億元,さらに2005年に2460億元に増加,輸出も20億ドルに達し,従業員数は(01年現在)約35万人である。北京市は01年にサイエンスパーク条例を施行し,税制優遇や戸籍緩和で起業や投資を一層促し,優秀な人材を確保することを企図し,大学と産業界,官界との産官学共同は米国以上に徹底している。実際,2004年12月にIBMのパソコン部門を買収した想集グループは中国科学院設立のベンチャーであったし,印刷技術や金融メディアで発展している北大方正集団は北京大学が1988年に100%出資で設立した企業である。 聯想,方正,四通,紫光,同方などの優良ハイテク企業の他にも,現在も新しい企業が続々と進出している。2004年1月現在,同パークで国内,海外で株式上場を果たしている企業は56社となっている。また,管理委員会によると,帰国留学生の中関村における起業の勢いは盛んで,1日当たり2社の割合で帰国留学生創設の企業が登録。2004年10月現在,帰国留学生創設の企業は2300余社,ハイテク企業で就職している帰国留学生は約6000人に達し,全国53のハイテクゾーンで起業している帰国留学生数の半数を超えているとしている。 また,2005年3月にこれまでの研究総括として豪州NSW大学において,IT国際伝播のメカニズムとして「垂直統合」と「コングロマリット」機能についてPradep Lay博士と議論を重ねてきた。この研究成果は,Academy of International Businessにおいて発表される予定である。
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