研究概要 |
『會計』は,平成11(1999)年度まで日本会計研究学会の事実上の学会誌と位置づけられてきた雑誌であり,現在でも会計学の分野においてわが国で最長の歴史をもつ代表的雑誌とみなされている。 研究代表者の中野および研究分担者の橋本は,『會計』に昭和戦前期(第二次世界大戦前)に掲載された多数の研究論文等の中から「会計および会計学の歴史」にかかわる論文を抽出し,その記述内容を個別に検討することにより,当該期間におけるわが国の会計史研究の動向を分析しその結果を既に公表している。 本研究課題においては、研究分担者に桑原、と清水を新たに加えて,上記の研究を発展・継続して行うものとし,『會計』が第二次世界大戦中の休刊を経て復刊された昭和24(1949)年度から昭和63(1988)年度に至る,昭和戦後期に同誌に掲載された研究論文等から「会計史」に関する文献の抽出と分析を実施した。また,本研究課題を遂行する過程で,以前の研究において採用した分類基準の部分的再検討が迫られ,その結果として,会計史研究の範囲をより限定的に捉えるとともに,以前に公表した研究結果についても文献の抽出範囲とその内容分析が適切であったか否かも併せて再検討されている。 このような検討の過程を通じて,『會計』に掲載された研究論文等から,昭和戦前期については158件,昭和戦後期については466件の論文を「会計史」にかかわるものとして抽出した。そして,これらの論文等の記述内容の個別分析を総合した結果として,その多くは,例えばイタリアにおける複式簿記の生成やイギリスにおけるその近代化といった,もっぱらイタリア,イギリス,ドイツ,アメリカなどの欧米における会計史を対象とした研究であること,また,会計史にかかわる研究論文が時代を経るにつれて増加するとともに,研究領域的にはもっぱら簿記の歴史を対象とした時期から財務会計を中心とした会計学全般へとその史的関心が拡大していったということ,ただし,昭和57(1982)年度に日本会計史学会が発足して後は,主たる研究報告の場が『會計』から日本会計史学会の機関誌である『会計史学会年報』へと移行してきていること等の動向が明らかとなった。
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