研究概要 |
我々の研究の主たる目的は,新谷の結果(J.Fac.Sci.Univ.Tokyo 22(1975),25-65)を一般の半単純実Lie群上の離散系列表現に付随する保型形式の場合に一般化し,新谷の結果の背後にある原理を理解することにある.未だ研究途上であって,引き続き科学研究費補助金(研究題目:保型形式論から見た離散系列表現の研究,課題番号:17540005)の補助のもと研究が継続中である.以下に我々の研究成果の内主要な二点を提示する; 1)有理数体上定義された半単純線形代数群の放物的部分群の冪零部分のLie環の中心は,その放物的部分群のLevi部分の随伴作用に関して概均質ベクトル空間となり,そのZariski開軌道から放物的部分群の特殊な性質(我々はそれを性質(E)と呼ぶ)が定まる.一方,問題の概均質ベクトル空間の一般元から我々の半単純代数群に付随した冪零軌道が定まる.逆に半単純代数群の冪零軌道から放物的部分群が定まる.我々は,性質(E)をもつ放物的部分群の集合と,付随する放物的部分群の冪零部分の中心降下列の長さが2であるような冪零軌道との間に全単射が存在することを確立した. 2)コンパクトJordan三重系は自然に半単純実Lie群を定義する.離散系列表現をもつ古典実Lie群は全てこのようにした得られる.この様な実Lie群の離散系列表現の行列成分を,放物的部分群の冪零部分の中心(それは指数写像を通してそのLie環と同型である)に制限した関数のFourier変換,特にPoisson和公式が問題となる.我々は,問題の離散系列表現のHarish-ChandraパラメータがWeyl部屋の壁から十分に離れていれば,問題の関数に関してPoissonの和公式が成り立つことを確立した.
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