研究概要 |
最近,超弦理論におけるD-ブレインを用いてゲージ理論の数理的構造を研究する新たな手法がいくつも開発されている.例えば例外型のホロノミー群G_2,Spin(7)をもつ多様体上のD-ブレインを考えることにより,超対称ゲージ理論の非摂動的力学が記述できる.このような動機の下,分担者の安井氏との共同研究により,等質空間SU(3)/U(1)を主軌道とする余等質性1のリーマン多様体上のSpin(7)計量を具体的に構成した.特に無限遠で漸近的に有限半径の円周S^1が残る新しいタイプの計量を見つけた.これは4次元重力インスタントンにおけるTaub-NUT計量やAtiyah-Hitchin計量の高次元化に相当するものでありM理論のコンパクト化への応用が期待できる. 弦理論の目標の一つはゲージ理論と重力理論の統一であり,数年前からゲージ理論・重力対応という見方が注目されているが,位相的ゲージ理論や位相的弦理論を考えるとゲージ理論・重力対応は数学的により精密な形で定式化できる。Nekrasovによって4次元ゲージ理論のインスタントン計算が数学的に厳密に遂行されたことは,最近の大きな発展であった.東京大学の江口氏との共同研究によりNekrasovの計算が位相的弦理論の分配関数として再現できることを示した.具体的にはSU(N)Seiberg-Witten理論に関するNekrasovの分配関数がP^1上のA_{N-1}型ALE fibrationを標的空間とする位相的弦理論から得られる.また物質場を付け加えることはこの標的空間においてblow upの操作をすることに対応する.この計算で用いた手法は,表現論や組み合わせ論,結び目の理論や可積分系の理論など数学の様々な分野と深いつながりがあることが分かっており,今後,発展が期待される. 分担者の太田は,代数曲面の孤立特異点のまわりのリンクについて,そのシンプレクティックフィリングの変形類を決定した.また,安井は高次元重力インスタントンおよびブラックホールを研究し種々のEinstein多様体の構成を行った.
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