研究概要 |
分枝過程の生物個体群動態への応用として,以下のような問題について知見を得た. 1.Multiply-controlled branching processを用いて,密度依存の遅れと動態の周期的変動との関係. 2.Controlled branching processを用いて,個体群の密度依存性と動態安定性の関係. 3.General continuous branching processを用いて,一種個体群の齢構成と増殖率および生存曲線との関係. 4.Simple branching processを同時に多数用いて,一生態学的群集の構造と環境のランダム変動および移入率との関係. 5.ランダム環境下のNear-critical branching processを応用して,ミトコンドリア・イヴの年代推定への環境変動の影響. これらの結果の一部は著書「確率過程と数理生態学」にも取り入れることができた.以上で得られた知見は数学的にはまだ明らかにされていないことが多いが,コンピュータシミュレーションを活用することで得られたものである.今後,これらの問題をさらに発展的にかつ数学的にも研究を進めることは課題である. これまでの研究から分枝過程は個体群動態など生態学に限らず,DNA分子のPCR増殖法などより広く生命科学の諸問題に応用可能でありかつ有意義であることを認識した.このようなことから金沢で開催した研究集会「確率過程と数理生物学」(広島大学の瀬野裕美氏に企画を依頼)は今後の研究発展のために大変有意義であったと考える.
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