研究概要 |
本研究課題では,滑らかな多様体M上の微分同相写像の作る群の表現について考えた。このような写像のうち、supportがcompactであるものの全体をDiff_0(M)と記す。この群はもとの多様体Mの情報を沢山もっており、また量子力学との密接な関係をもつため、その表現を調べることは意義あること思われる。事実、いままでに様々な群の既約表現が構成されてきた。 本研究では、これらと本質的に異なる(同値でない)無限次元表現を、無限大のmassをもったM上の滑らかな測度μの無限制限直積を用いて構成することに成功した。より正確に述べると以下のようになる; E:={E_n}をMのBorel setの可算族で次の3つの性質をもつものとする(Eをμ-unitalという)。 (1)0<μ(E_n)<+∞ (2)Σ|1-μ(E_n)|<+∞ (3)E_nは互いに素。 このμ-unital Eを用いると、M^∞上に制限直積測度ν_Eがまず構成できる。つぎに、自然数上の有限個を置換する無限対称群の既約ユニタリ表現Πをひとつとり、M^∞上の可測関数fで次の性質を持つものを考える。 (1)f(xσ)=Π(σ)^<-1>f(x) (2)f(x)はD_E上2乗可積分、ただしD_EはσでD_Eを動かして得られた集合が互いに素で、その和集合がν_Eに関してfull measureとなるBorel集合である。このようなfの全体をH(Σ)として、ここへDiff_0(M)が対角的作用するL^2上の自然表現を持ち込む(ただし、Σ=(E,Π))。すると、ユニタリ表現(T(g),H(Σ)),g∈Diff_0(M)ができる。この表現に関する主要な結果はつぎの通りである; [1]ユニタリ表現(T(g),H(Σ))は既約である。 [2]Σ=(E,Π)とΣ=(E',Π')に関する2つの表現がユニタリ同値であるための必要十分条件はある置換aが存在してΠとΠ'をaで共役形になおしたものが同値、かつΣ|μ(E'_<a(n)>-μ(E_n)|<+∞となること。
|