研究概要 |
本研究の目的は,実数体または複素数体上のn次の一般線型群GL_nまたはn次の直交群0_nをG_nと記し,G_{n-1}を自然にG_nに埋め込むとき,G_nの既約表現で,一般には無限次元であるnon-unitary主系列表現を,G_{n-1}に制限したときの分岐則を記述することである.G_nの主系列表現は,B_n(=G_nのBorel部分群)の1次元表現からの誘導表現として実現されるので,主系列表現の分岐則を調べるには,旗多様体G_n/B_n上のB_{n-1}-軌道の閉包関係を記述しておかねばならない.一般に,簡約型Lie群GとそのBorel部分群をB, Gが正則に作用する正規代数多様体をXとし,Xに稠密な開B-軌道が存在するとき,G-空間Xを球多様体と呼ぶ.その例として,旗多様体,対称多様体があるが,G_n/B_nがG_{n-1}-空間として球多様体であることが以前の研究でわかっていた. G_n/B_n上のB_{n-1}-軌道閉包の包含関係はBruhat-Chevalley order(BC-order)と呼ばれる.BC-orderを組合せ論的アプローチで記述するには,G_n内で極小放物型部分群と両側剰余類との積を分解し,(右側)weak orderが得る必要がある.本研究において,weak orderを調べた結果,これに関して極小,かつ,閉集合でない軌道が存在することがわかり,したがって完全なBC-orderを決定することは不可能であった.これは旗多様体および対称多様体の場合には見られない現象である.右側weak orderだけでなく,左側weak orderを同時に考えれば,完全なBC-orderの記述が可能という予想に到達し,これが正しいことの証明も得ている(未発表.現在論文を準備中). G/BのB-軌道はSchubert多様体と呼ばれ,GのWeyl群でパラメトライズされる.それをX_w(wはWeyl群の元)とかくと,A型の場合,X_wのGL_nにおける原像の全行列環M_nにおける閉包のM_nの座標環における定義イデアルは小行列式により生成される.本研究の最終的な目的である,GL_nのnon-unitary主系列表現のGL_{n-1}への分岐則を調べるには,Schubert多様体をB_{n-1}-軌道に分解し,各軌道がSchubert多様体の座標環のどのようなイデアルで切り出されるのかを具体的にそれら小行列式で記述する必要がある.
|