研究概要 |
2進法を用いて得られるvan der Corput列の概念を拡張することで,1次元の変換の逆像を用いて疑似乱数列を生成した.この疑似乱数列の性質は変換から得られる力学系のエルゴード的性質と深いつながりがある.これが一様分布列であることは力学系が混合的であることと同値であることが力学系の不変確率測度の研究によって示すことができる.さらに力学系に対応するPerron-Frobenius作用素の固有値を研究することで,この列のdiscrepancyを評価することができた.このことにより,数値積分への応用の道が開かれた.Markov型の場合には2001年度までにこれらの理論は完成したが,今回さらに,1次元の場合に,傾きの等しい一般のpiecewise linear変換の作るvan der CorputのdiscrepancyとPerron-Frobenius作用素の固有値,いいかえれば力学系のゼータ関数の特異点の性質との関係を明らかにすることができた.これについては2002年9月にベルリンで開かれたIMACSのシンポジウムおよび12月に慶応大学で開かれたWorkshopで報告を行い,論文を準備中である. この結果をさらに改良して,2次元のlow discrepancy列を記号力学系を用いて構成することに成功した.この構成に用いる変換には数論的な意味があると思われる.2次元の場合には,今までの力学系の混合性の概念よりも,より混合性の高い変換であることが必要であることがわかった.この概念をエルゴード理論的に意味づけることが求められると思われる.さらに高次元のvan der Corput列の構成を進めたいと思う.
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