研究概要 |
この3年間の研究期間での本研究においてC*環の構造理論と特にそのK理論を用いての、記号力学系の研究を大きく進展させることができた。特に来日したW.Krieger教授(ドイツ、ハイデルベルグ大学)と2件の共同研究を完成させることができた。一つは論文A lambda-graph system for the Dyck shift and its K-groups (with W.Krieger), Documenta Math. 8(2003),79-96において、ダイクシフトと呼ばれる括弧の整合列からなる記号力学系に対して、カントールホリゾンラムダグラフシステムという概念を導入して、それからできるC*環のK-理論を計算し、それが記号力学系の位相共役不変量を与えていることをしめした。また論文A class of invariants of the topological conjugacy of subshifts (with W.Krieger), Ergodic Theory and Dynamical System 24(2004),1155-1172においては、記号力学系を表現するラムダグラフシステムに対して、ラムダエントロピーと呼ばれる位相エントロピーを一般化した不変量を導入した。また、2編の論文On strong shift equivalence of symbolic matrix systems, Ergodic Theory and Dynamical System 23(2003),1551-1774とStrong shift equivalence of symbolic dynamical systems and Morita equivalence of C*-algebras, Ergodic Theory and Dynamical System 24(2004),199-215において、記号力学系の最も基本的な同値関係である強シフト同値をラムダグラフシステムとC*環の森田同値の観点から研究した。さらに、論文A simple purely infnite C*-algebra associated with a lambda-graph system of the Motzkin shift, Math, Z. 248(2004),369-394において、モツキンシフトと呼ばれるダイクシフトにその単位元を加えた記号力学系に対して、そのカントールホリゾンラムダグラフシステムからできるC*環が単純純粋無限型なC*環でそのK-理論も計算できた。記号力学系の間のファクター写像と対心するC*環の関係を論文Factor maps of symbolic dynamics and inclusions of C*-algebras, International J.Math. 15(2004),313-339で研究し、記号力学系からできるC*環のヴォイクレスクの意味の非可換エントロピーを具体的に論文Topological entropy in C*-algebras associated with lambda-graph systems, prerint, Ergodic Theory and Dynamical System(印刷中)において計算することができた。
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