研究概要 |
本研究では特に以下の3テーマについて重要な成果を挙げた。 I 無限大不変測度を持つ可測力学系は測度有限集合へのinduced transformationを通して,有限不変測度を持つ可測力学系と期待値無限大の天井関数の組として表現される。この天井関数は再帰時間を表している。今回の研究ではこの観点から期待値無限大の定常確率変数列の大数の法則に関する問題の研究を行った。continued fraction mixingとよばれる性質を持つ確率変数列について研究対象をおいている。もし,ある正数Hに関してPr(X_n>N)=H/N+o(1/N)である場合,X_1+X_2+...+X_n-max X_i)/(n log n)がHに概収束することが証明された。さらにこの議論を一般のtrimmed sumに関して拡張した。 II 記号力学系のtail同値関係より作られるマハラム変換に対して,その局所有限不変測度の特徴付けを行った。特に,βシフト,可算マルコフシフトについて成果を挙げた。 III 無限大不変測度を持つエルゴード的変換のKakutani typeがrecurrenceのmultiplicityを下からaprioriに評価すること,またそれが両者の関係としてはbest possibleなものであることを示すことに成功した。また、ほとんどすべてのd次元単位立方体のベクトルに対してヤコビ-ペロンアルゴリズムの作る同次近似分数の分子・分母の組が任意の自然数をmodとして一様分布していることを証明した。
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