研究概要 |
1 単純でないAF環とZの接合積が必ずしもトレース的安定階数が0になるとは限らないことが、岸本氏により提出された。これにより接合積がトレース的安定階数0を持つためには単純性が必要であるように予想される。 2 N.C.Phillips氏との共同研究において自己同型写像のトレース的Rokhlin性を定義し基本的性質を調べた。この概念は、岸本氏の提唱しているRokhlin性より一般に弱い。C^*・環Aがトレース的安定階数0を持つ単純C*-環、αをA上のトレース的Rokhlin性を持つとする。このとき、αによるAとZの接合積C*(Z, A, α)は、単純、実階数0、安定階数Iをもち、さらにC*(Z, A, α)の射影作用素の順序がトレースで決定されることが示せた。しかしながら、C*(Z, A, α)がトレース的安定階数0を持つことまでは証明できなかった。但し、このときαは近似的内部性を仮定していない。 3 H Lin氏とトレース的Rokhlin性を強めたcyclicトレース的Rokhlin性を定義し、これを用いることにより目標となる結論を導くことができた。つまり、Aがトレース的安定階数0を持つ単純C^*-環、αをcyclicトレース的Rokhlin性を持つとき、その接合積C^*(Z, A, α)は再びトレース的安定階数0を持つことが示せた。αがトレース的Rokhlin性かつ近似内部性を持てば、αはcyclic性を持つ。特にAが可分で普遍係数定理を満たせば、先のC*(Z, A, α)はコンパクトな有限CW-complexX上の関数環と有限次元C*-環とのテンソル積の帰納的極限として実現できることが、H Lin氏の分類定理から帰結できる。 4 Elliott氏のUHF環上のα α=1dとなる自己同型写像からなる接合積の構成はまだよくわからないが、一般の有限群からUHF環上の自己同型写像の集合への作用αから生成される接合積C*(G, UHF, α)の安定階数が常に2以下になることが照屋氏との共同研究で示せた。
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