研究概要 |
本研究は、宇宙の進化における第一世代の星、すなわち、重元素を含まない種族IIIとよばれる星の正体を、星の化学組成の観点から、理論的に解明することを目的とした。特に着目したことは、極端な金属欠乏星の化学組成が、特異なパターンを示すことである。例えば、金属量の少ない星ほど、Feに対してMn, Crが少なく、逆にZn, Coが多い。主な結果は次の通りである。 1)極超新星規模の大爆発による元素合成の特徴が、上記の極端な金属欠乏星で観測されるFe, Mn, Cr, Co, Znの組成比の特徴を説明しうることを示した。 2)太陽の130-300倍の質量を持つ星が起す、電子陽電子対の発生による核爆発型の超新星では、1)で説明できたような観測的特徴を説明できない。 3)Feに対してCとNが太陽組成比より極端に大きい金属欠乏星が多く発見されているが、このような組成の特徴は、fallbackが起こって鉄属元素の大部分がブラックホールに落ち込み、fallback前に起ったmixingによって、鉄がわずかに放出されたというモデルでよく説明できる。 4)mixing-fallbackによって、C-rich metal-poor starsの元素組成を統一的に説明できる。 5)このようなfallbackが起きていることは、第一世代の超新星の多くでは、ブラックホールが形成されることを示唆する。 6)Bipolar的な爆発では、mixing-fallback processと同等の現象が起こる。
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