研究概要 |
光吸収に引き続く励起子の生成過程ならびに個々の緩和素過程の詳細を明らかにすることを目的として,励起子研究のモデル物質であるβ-ZnP_2結晶を対象に,高分解レーザー分光および超高速時間分解分光を実施し,以下の成果を得た。 1.励起子の微細構造を探ることを目的として,高分解光変調反射分光を実施した。プローブ光に線幅の狭い波長可変CWチタンサファイアレーザーを用いることで,n=6までの非常に鋭い励起子構造を明瞭に観測することに成功した。この光変調反射の信号は,結晶の表面電場変調により生じる事を示すとともに,変調スペクトルΔR/RのKramers-Kronig解析から,誘電関数の変化Δε_1,Δε_2を求めた。 2.励起子系の位相緩和に関する知見を得る目的で,フェムト秒モードロック・チタンサファイアレーザーを光源として,スペクトル分解の反射型縮退四光波混合分光を実施した。励起子ポラリトンのL-Tギャップ域における位相緩和時間T_2として1〜4psを得た。エネルギー位置の違いによるT_2の差異は,ポラリトンの音響フォノン散乱の割合いの違いを反映している。また,四光波混合光信号の遅延時間依存において自由励起子と束縛励起子間の明瞭な量子ビートを観測することに成功した。更に,強励起下での四光波混合分光を行い,励起子分子による信号を観測した。 3.ポラリトンの分布数緩和のダイナミクスについての知見を得ることを目的に,フェムト秒レーザーを用いた反射型ポンプ・プローブ法による超高速分光を実施した。ポンプ光照射直後において,L-Tギャップ域で励起子ポラリトンによる顕著な負の反射率変化を観測した。また,1.550eV付近に観測される反射率変化は,そのエネルギー位置および分散型のスペクトル形状から,励起子-励起子分子間の過渡的な遷移によるものと推論した。更に,高次励起子の分布数緩和についても調べた。
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