研究概要 |
1.並列計算機システムの構築と量子モンテカルロ法のプログラム開発 市販のPC部品を用いて16CPUのPCクラスター計算機を自作した.各CPUはギガビットイーサネットで相互に接続され,MPIによる並列プログラムを高効率に実行可能である.動的クラスター近似計算で用いるクラスター不純物アンダーソン模型の解法に量子モンテカルロ法を用いるプログラム開発を行った.16CPUのシステムにおいては2次元の少数クラスター不純物模型への適用に限られ,より大規模システムに適したプログラム開発の継続を計画している. 2.金属強磁性合金の電子状態研究 動的平均場理論とコヒーレントポテンシャル近似を組み合わせることによって,3d強磁性金属合金の電子状態を研究した.従来の一体近似計算と比較することによって,電子相関の揺らぎの効果がキューリ温度の合金濃度依存性に定性的にも寄与していることを示した. 3.充填スクッテルダイト化合物の光電子スペクトル解析と重い電子状態の研究 Pr充填スクッテルダイトの共鳴光電子スペクトルをNCA法を用いて解析し,Prイオンの多数の多重項励起状態が光電子スペクトルの共鳴ピークのサテライトに現れることを示した.Prスクッテルダイト化合物の重い電子状態について数値繰り込み群法を用いて研究した.この系の重い電子状態の起源に近藤効果が重要となるのは,Γ8対称性の伝導電子とPrのf電子との混成が大きい場合に限られることを示した.PrOs4Sb12の重い電子状態の起源に近藤効果は副次的なものであることを示した. 4.LMTOバンド計算と動的平均場理論の研究 電子相関効果の波数依存性を現実の物質の実験結果と比較するために,動的平均場理論と組み合わせることのできるLMTO法のバンド計算プログラムの整備を行った.また,バンド計算によって求めた混成効果が重要な軌道の部分状態密度から不純物模型の有効混成を評価するプログラムを作成した.この有効混成を用いた不純物模型を解くことによって,バンド計算から得られる電子状態に基づいて電子相関効果を考慮する出発点とすることができた.
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