研究概要 |
本課題では不規則電子系のdephasingに関する様々な問題について,数値的に研究した。不規則電子系における量子輸送現象は電子波の複雑な干渉パターンが重要な役割を演じ,これは低次元ほど顕著である。この干渉パターンが破れるのがdephasingである。特にスピントロニクスへの応用からスピン軌道相互作用の効果が興味深い。本課題では以下のような研究を行い,研究目標を達成するとともに,多くの副産物を得た。 1)通常の2端子形状の計算にdephasingを入れるため,3端子形状のを考え,その輸送係数を計算した。その副産物として,スピン軌道相互作用によるスピン分極の生成を得た(雑誌論文の2番目と4番目)。 2)スピン軌道相互作用の効果:低次元(2次元以下)でもスピン軌道相互作用が強い系はAnderson転移を示す。そうした系でのコンダクタンスの揺らぎ(雑誌論文の10番目),2次元のAnderson転移(論文8と15),フラクタル格子上のAnderson転移を調べた(雑誌論文の1番目)。また動的ポテンシャル中のdephasingを運動方程式の方法により調べた(雑誌論文の14番目)。 3)Random phaseモデルでの電子輸送現象を詳細に研究した。(雑誌論文の6番目と11番目。) 4)不規則電子系のdephasingを詳細に調べる際に,空間の多くの点に熱浴をつけることが考えられる。そうしたモデルにはChalker-Coddington型のネットワークモデルが,単純かつ本質を突いている。このChalker-Coddington型のネットワークモデルを研究し,総合解説を執筆した(雑誌論文の5番目)。 5)不規則性がある場合のエッジ状態の性質を明らかにした。(雑誌論文の3番目と7番目。)
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