研究概要 |
本研究期間中の最も重要な成果は、当初の予定に従った(1)強い静電場中におけるヘリウム2電子光励起共鳴の光イオン測定、さらに新しい発展として、(2)"Lifetime Resolved Fluorescence Spectroscopy"の達成、の2件であったといえる。 前者(1)は、強い静電場中の多電子励起状態という、電子相関と外電場の影響が拮抗するような状況における原子構造とダイナミックスの研究であり新たな処女領域を切り開いたものといえる。現にこの実験成果に対応する摂動の選択則を論じた理論計算の論文がごく最近発表され(Tong & Lin, Phys.Rev.Lett.92, 223003, 2004)、急速な展開が見られる。電場輸送される疑自由電子の電子相関など固体物理との関連も興味深い。 本実験のために100kV/cmもの電場を反応領域にかけられるユニークな装置を立ち上げ、何回もの予備的実験をPhoton Factoryで行った後、BerkeleyのAdvanced Light Sourceにおいて第3世代VUVSX光源ならではの高分解能と大強度を用いて最終的な測定を行った。 後者(2):上記強電場装置は、元来は光イオン測定のみを目的として計画されたのであったが、本グループポストドクJames Harries等のイニシアチブにより、蛍光検出および準安定原子検出の機能も持たせることにした。これは、放射光のシングルバンチ運転を用い、時間構造を利用した新しい技術によって蛍光と準安定原子を独立に検出するものである。特に蛍光寿命の正確で効率的な測定が可能になったのは特筆すべきことであった。これによって励起光エネルギーに対する蛍光寿命プロファイルの2次元スペクトルを測定し、蛍寿命プロファイルに含まれるいくつかのイオン終状態ごとの異なる寿命を解析し、終状態別の光エネルギー走引スペクトルを得ることができるようになった"Lifetime Resolved Fluorescence Spectroscopy"。これは光電子分光(CIS scan)とも通常の蛍光エネルギー分光とも異なる長所特質をもつ画期的な「第3の方法」であると認識される。
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