研究概要 |
本研究の目的は,広帯域地震波形データの詳細な解析により,地球内部不連続面の凸凹構造を高精度かつ高解像度に推定することである.凸凹構造推定に必要な理論波形計算手法の定式化及びソフトウェアの開発を行った.以下に具体的な成果を述べる. ・我々の開発した高精度理論波形計算手法を拡張し,複雑な形状の内部不連続面を持つ媒質に対して,高精度理論波形計算を可能にした.また従来の理論波形計算手法では内部不連続面の取り扱いが不十分であったために理論波形計算の効率が良くなかったこと,本研究でその問題が解決されたことを示した.理論波形計算は波形データそのものを用いた内部構造推定(波形インバージョン)の際に最も計算時間を要する部分であり,今年度の成果により,凸凹構造推定に要するCPU時間を約5分の1に短縮されると見積もられる。 ・データの密度の尺度としてセンシティビティを定義し、センシティビティがモデルパラメータ同士で均等になるように重みをつけることにより、正しいモデル推定を行う手法を開発した。また、それを用いて予備的な全マントル3次元不均質構造モデルを推定した(Takeuchi & Kobayashi 2004)。 ・一定間隔のグリッドに一致しないような任意形状の固液境界のある場合に高精度でかつ効率良く波形計算できる手法を導出した。 ・従来の内部構造推定研究のレビューを行った(Geller & Hara 2002,川勝 2002).内部構造研究には魅力的かつ未解決な問題が数多く残っていること,従来の内部構造推定研究には限界が存在し,手法開発等を通じてこれらを解決しなくてはならないことを再認識した.
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