研究課題/領域番号 |
14540408
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
気象・海洋物理・陸水学
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
秋友 和典 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (10222530)
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研究期間 (年度) |
2002 – 2003
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研究課題ステータス |
完了 (2003年度)
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配分額 *注記 |
2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
2003年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2002年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
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キーワード | サーモバリック効果 / ウェッデル海 / 対流 / 傾圧不安定 / 底・深層水形 / 底・深層水形成 |
研究概要 |
海水の状態方程式の非線形性および弱い成層構造のために急激なサーモバリック対流が生じ得るウェッデル海を念頭に置いて、初期の水平密度構造が対流混合によってどのように変化するのかを調べた。まず、現象の特徴を端的に捉えるために、理想化した水温・塩分場を初期値として用い、1500m深までの対流が水平一様に起きるとした場合に見られる変化を調べたところ、以下のことが明らかになった。すなわち、(1)対流混合による水温・塩分場の変化が状態方程式の非線形性を通して基本場の傾圧性を強化すること、および(2)初期密度場に対して水温・塩分が互い相補的に働きほとんど水平密度勾配が存在しないときにその強化が最大となること、である。現実に、対流の生じる前のウェッデル海においても、水温・塩分場の顕著な水平変化にもかかわらず密度の水平分布にはほとんど変化が見られないことを考えると、(2)は重要な結果といえる。また、これらの変化に対して影響を与える状態方程式の非線形性として、水圧とともに熱膨張率が大きくなるサーモバリック効果に加えて、水温変化の2乗に比例するいわゆるキャベリング効果があることがわかった。さらに、ウェッデル海での観測データを用いた検討では、(3)現実には対流混合の深さに空間変化の生じることが背景場の傾圧性を強化するもう一つの要因になることがわかった。これらの結果は、傾圧性の弱い極海域(ウェッデル海)においても、サーモバリック対流によって強化(形成)された傾圧不安定が鉛直輸送および底・深層水形成過程に大きな影響を持つ可能性があることを強く示唆している。次に3次元非静水圧モデル実験を行うことで、上記の結果を確認した。一方、対流発生後の冷却率に対する傾圧不安定の強度の依存性を調べたところ、初期密度場の決定に対して塩分が支配的な場合には、125Wm^<-2>の冷却率の場合に最も傾圧不安定が発達するのに対し、水温が支配的である場合には、冷却率の増加とともに傾圧不安定は弱まった。これは、前者の場合では顕著な傾圧性が表層付近に現れるのに対し、後者の場合には対流混合層の底付近に現れるためである。初期において水温と塩分がほぼ相殺しほとんど水平密度勾配が見られない現実のウェッデル海に近い状況では、25Wm^<-2>の冷却率の時に、最も顕著な傾圧不安定が生じた。これまでの観測で結氷下の海面冷却率は数十Wm^<-2>と見積もられており、ここで得られた結果は現実の極海域の状況が傾圧不安定の発達およびそれによる輸送に最も適していることを示唆しており重要な結果である。
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