研究概要 |
磁気圏におけるPi2脈動の発生・伝播機構を調べるため,夜側のL=10を中心に波動を励起するL方向に局在化した波源を与え,MHD波動伝播の3次元シミュレーションを行った。シミュレーションモデルとして,ダイポール磁場とプラズマ圏を持つ磁気圏並びにペダーセン電気伝導度を持つ電離圏を用い,磁気圏内で観測されているPi2波動の振舞いを再現することができた。また,プラズマ圏の構造が経度方向に一様ではないことを考慮した3次元シミュレーションを行い,プラズマ圏空洞共鳴振動としてのPi2脈動の周期は経度(地方時)によって異なることを見出した。 以前に研究代表者らが与えた沿磁力線電流(FAC)の生成を記述する波動方程式では,無摂動状態が静止状態であることを仮定している。一方,近年の3次元グローバルMHDシミュレーション技術の進展に伴い,突発的な外部擾乱(太陽風の変動など)に対する磁気圏のより現実的な過渡応答を調べることができるようになってきた。このようなシミュレーションでは,無摂動状態であっても,磁気圏は静止状態になく,対流とFACが存在する。そこで,そのような状況にも対応できるよう,FACの生成を記述する波動方程式の一般化を行った。 Pi2脈動の発生機構として,次のような準振動的カレントウェッジモデルを提唱した。サブストームの開始に伴って磁気圏におけるオーロラ爆発領域の東西両端で生成されたFACは,アルベン波によって磁力線沿いに運ばれ,極域電離層で反射される。その結果,両半球電離層間でアルベン波のバウンシングが生じ,オーロラ爆発領域の東西両端に逆位相の準周期的な磁力線振動が現れる。これらの磁力線振動に伴うFACは,電離層電流と尾部横断電流により閉じられる。このようにして,1〜2分の時間スケールをもつ準振動的なカレントウェッジが形成され,Pi2脈動は主としてこのウェッジ電流により生み出される。この提唱に基づいて,磁気圏におけるPi2脈動の伝播モデルが構築され,伝播モデルを観測的に支持する結果が得られた。
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