研究概要 |
新潟〜山形県境の朝日山地周辺の「羽越地域」には,先新第三紀基盤岩類が広く分布している.しかし,この地域が西南日本の地体構造区分のうえでどこに対比されるのかは未解決のままであった.その要因の一つとして,この地域の変成作用に関する情報の欠落があった.本研究は,澄川変成岩ゼノリス,泡滝片麻岩,飯豊変成岩など,羽越地域に断片的に分布する変成岩の変成作用を解析し,地体構造区分の問題に言及することを目的とした. 2002年秋には,日本地質学会が新潟大学で開催されたが,その際に羽越地域の変成岩に関する巡検を企画し実行した.この巡検では,羽越地域の地体構造区分や下部地殻の変成作用に関心の深い研究者と現地で討論する事が出来,当方にとっても収穫になった. 3年間の研究の結果,下記のような成果を挙げる事が出来た。 <澄川変成岩ゼノリス> 変成度は,角閃岩相〜グラニュライト相のものが混在している.変成作用のP-T-t経路は,時計回りの経路である. <泡滝片麻岩> 砂泥質岩起源のものと,パーアルミナス花崗岩起源のものの2種類があり,変成度は角閃岩相低温部である.広域変成作用と,大桧原花崗閃緑岩による接触変成作用の2度の変成作用を被っている. <飯豊変成岩> 変成度は,角閃岩相低温部である. <総合的な事項> 澄川ゼノリスや泡滝片麻岩に,羽越地域の白亜紀花崗岩類を生み出した起源物質であり,最下部地殻は超高温変成作用の条件に達している.羽越地域の変成岩は領家変成岩に対比され,白亜紀深成岩類は領家帯花崗岩に対比される。羽越地域の古第三期火成岩類は,山陰帯に対比される可能性が大きい. 本研究により,羽越地域の先新第三系基盤岩類の対比問題は大きく進展した.これにより大陸地域,特にシホテアリン地域との対比が進み,東アジアの白亜紀〜古第三期テクトニクスに大きく貢献出来たものと考えられる.
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