研究概要 |
本研究は,大陸縁のリソスフェアマントルである北海道日高変成帯の幌満かんらん岩体と,海洋性リソスフェアマントルであるオマーンオフィオライトのマントルセクションを研究対象とし,リフト帯と中央海嶺などの伸張場でアセノスフェアマノトルの上昇に起因するリソスフェアマントルの削剥・改変過程の解読を行った.とくに,かんらん岩とその構成鉱物の希土頬元素をはじめとする微塵元素の空間分布をもとに,アセノスフェアの部分融解で発生した苦鉄質メルトが,リソスフェアマントルを通過する際に引き起こした一連の現象を定量的に明らかにすることを目的とした. 本研究の結果,幌満かんらん岩体では,140メートルの連続露頭の中に未分化マントルに匹敵するレルゾライトからメルトに枯掲したハルツバージャイトまで多岐にわたる岩相が存在し,さらに微量元素の分布は主成分元素以上に複雑なことが明らかになった。すなわち,造山帯レルゾライトが過去にアセノスフェアマントルによる様々な改変を受けてきたことを示している。一方、海洋性リソスフェアマントルは,造山帯レルゾライト岩体に比較して,組成不均質性に乏しい.オマーンオフィオライトのマントルセクションの約25x15kmの範囲内における組成変化は,幌満岩体における140mの中で認められた組成変化よりもはるかに小さい.幌満岩体の場合,希土類元素の分布は数センチ〜メートルオーダーで変化する.一方,オマ-ーンオフィオライトのマントルセクションにおける組成の均質性は中央海嶺下における部分融解によるMORB形成のプロセスの影響を色濃く残している.しかし,本研究によりオマーンオフィオライトのマントルセクションにも従来知れていなかった組成不均質性が存在することが明らかとなった.すなわち,海洋リソスフェアの再溶融とアセノスフェア起源のメルトによる再肥沃化がkm規模で生じた可能性が考えられる.
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