研究概要 |
富士火山の2つの長大溶岩である猿橋溶岩と三島溶岩について産状調査をおこなった.猿橋溶岩は,上流では十分な溶岩の供給量があり,下位層の古富士泥流の上を覆って地形面を形成したが,より下流地域では,古富士泥流が形成した地形面の河川浸食谷内にのみ露出している.ほとんどの地点で1枚のフローユニットで流れているのが観察できるが,調査地域の2ヶ所で,複数のフローユニットとそれぞれの底部にはパホイホイローブの構造が残存しているのが確認できる.それらの場所は支流の河川が合流する場所に近い.したがって、猿橋溶岩は基本的に涸れ沢となった旧桂川を流下して、膨張してシンプルフローとなっているのであるが、河川水によって水冷された部分ではその中途段階がフリーズして残存しているといえる.一方、三島溶岩は、研究地域内で見る限り、厚さ2m以下の薄いシートフローが累重している.少なくとも駒門風穴までは溶岩トンネルなどのチューブシステムが発達して、マグマは噴出口から高温・低粘性の状態で供給されたと考えられるが、調査地域の石脇付近では、マグマは一枚のシンプルフローとして流れることはできず、シートフローは比較的短距離で前方にも上方にも成長することは止めて、その上流部分のどこかにできた割れ目から次のフローユニットがあふれ出して、オーバーフローして行くということを繰り返したものと考えられる.これは、猿橋溶岩がほとんどの場所において厚さ数m以上の1枚のシートフローから構成されていることと対照的で、三島溶岩の膨張は不十分なものであったということがわかる.その主要な要因として考えられるのは、三島溶岩のほうがマグマ供給率が小さかった可能性以外に、猿橋溶岩が特にその下流部付近においては幅100m以下の狭い峡谷を流下したのに比較すると三島溶岩は比較的平坦な平野部を幅約2kmに拡がって流れているために溶岩流断面の単位面積あたりのマグマ流量が三島溶岩のほうが小さくて、その結果溶岩流1フローユニットの成長は三島溶岩において不十分であったということもできる. 本研究では溶岩に含まれる水の量をカールフィッシャー法で分析することを目的とし、分析条件を検討した結果、研究期間中に以下の分析方法が妥当であるという結論を得た.:(1)粉砕した試料とサンプルボックスをあらかじめ150℃に設定された乾燥機煉機の中で24時間以上乾燥させる.(2)乾燥させた試料とサンプルボックスを乾燥機から取り出し,デシケーターに入れて除冷させる.水の余計な吸着を防ぐために,即座に試料とサンプルボックスの重量を秤量し,再度150℃の乾燥機で24時間以上乾燥させる.(3)乾燥機から迅速に取り出した試料を,あらかじめ1000℃に設定した加熱炉の中へ入れて,水分測定を行う.測定時間はドリフトの上昇を避けるために,1時間以内とする.なお、150℃という乾燥機の温度設定が適当か否かは今後の検討を要する.また、100ミクロン以上粗粒なフラクションのみを用いて分析することについても検討する必要があり、その際にはそのフラクションが全岩組成をどれだけ代表するのか検証して検討を行う必要がある.
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